遺言書があっても遺言と異なる遺産分割はできる?——相続人全員の合意による対処法

遺言書が残されていても、相続人全員が合意すれば遺言内容と異なる遺産分割ができるケースがあります。その条件と注意点を解説します。

遺言書があっても、その通りに分けなければならないとは限らない

遺言書は故人の意思を尊重するための重要な書類ですが、実は相続人全員が合意すれば、遺言の内容と異なる遺産分割を行うことも法律上可能です。「せっかく遺言書を書いたのに意味がないのでは」と思われるかもしれませんが、遺言作成時と相続発生時で状況が変わっていることも多く、この仕組みを知っておくことは相続人にとっても遺言者本人にとっても有用です。

遺言と異なる分割が認められる条件

遺言内容と異なる遺産分割を行うには、主に次の条件を満たす必要があります。

  • 相続人全員の同意があること:一人でも反対する相続人がいれば、遺言と異なる分割はできない
  • 遺言執行者がいる場合は、その同意も必要になることがある:遺言執行者は遺言内容を実現する職務を負うため、勝手な変更は原則認められない
  • 受遺者(相続人以外に財産を受け取る人)がいる場合は、その人の同意も必要:相続人だけの合意では足りないケースがある

これらの条件を満たしたうえで、相続人全員が新たに「遺産分割協議書」を作成することで、遺言とは異なる形で財産を分けることが可能になります。

なぜ遺言と異なる分割をしたくなるのか

実務上、次のようなケースで遺言内容の変更が検討されます。

  • 遺言作成後に相続人の状況が変わった(介護の負担割合が変化した、経済状況が変わったなど)
  • 遺言に記載のない財産が後から見つかり、全体のバランスを取り直したい
  • 遺言通りに分けると特定の相続人の相続税負担が過大になる、または不動産の共有名義が複雑になりすぎる

このような場合、相続人全員が話し合いのうえで合意できれば、遺言に縛られず柔軟に分割方法を決め直すことができます。

注意すべき点:遺言者の意思と税務上の扱い

遺言と異なる分割は法律上可能ですが、遺言者が生前に「この通りに分けてほしい」という強い意思を示していた場合、相続人間の関係にしこりを残す可能性があります。変更を検討する際は、なぜ遺言と異なる分割をしたいのか、相続人全員が納得できる理由を共有し、感情的な対立を避ける配慮が必要です。また、遺言と異なる分割協議を行った場合でも、相続税の申告自体は原則として遺産分割協議の内容に基づいて行うことになりますが、分割のタイミングや内容によっては贈与税の課税リスクが生じる場合もあるため、税理士に事前に相談しておくと安心です。遺言書を作成する側も、付言事項で「状況次第では相続人間で話し合って調整してほしい」という趣旨を残しておくと、将来のトラブルを避けやすくなります。

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