ペットに財産を残す遺言書の書き方——「負担付遺贈」の仕組みと注意点
ペットは相続人になれないため、財産を託すには「負担付遺贈」が必要です。仕組みと遺言書の書き方、注意点を解説。
ペットは遺言書の相続人になれない
「自分が亡くなった後もペットの世話を続けてほしい」と考える飼い主は少なくありませんが、法律上、ペットは「物(動産)」として扱われ、相続人にも受遺者にもなることができません。そのため、遺言書に「愛犬に財産の3分の1を相続させる」と書いても、その部分は法的に無効になってしまいます。ペットの将来を守るためには、人(家族や知人など)に財産を託し、その人にペットの世話を義務付けるという方法を取る必要があります。単身世帯や高齢の飼い主が増える中、この問題は決して珍しいケースではなくなってきています。
「負担付遺贈」とは何か
この仕組みが「負担付遺贈」です。財産を受け取る人(受遺者)に対して、「ペットの飼育をする」という一定の義務(負担)を条件に財産を遺贈する方法です。
- 受遺者:財産を受け取る代わりにペットの世話を引き受ける人。家族・親族に限らず、信頼できる知人やペット専門の団体を指定することもできる。
- 負担の内容:「ペットが天寿を全うするまで適切に飼育すること」など、具体的な内容を明記する。
- 負担が履行されない場合:他の相続人は、受遺者に対して負担の履行を家庭裁判所に請求でき、履行されない場合は遺贈の取消しを求めることもできる。
- 受遺者の承諾:遺贈は受遺者が「放棄」することもできるため、事前に本人の了承を得ておくことがトラブル防止の鍵になる。
負担付遺贈の遺言書に書くべき内容
負担付遺贈を遺言書に記載する際は、次の点を具体的に盛り込むことがトラブル防止につながります。
- ペットの名前・種類・特徴(複数飼育している場合は個体を特定できるように)
- 飼育を託す相手の氏名と、財産(現金や飼育費用相当額)の金額
- 飼育方法や医療方針についての希望(かかりつけ動物病院など)
- 受遺者が飼育できなくなった場合の代替の受け皿
負担付遺贈は公正証書遺言で作成するのが安心です。内容の実現可能性や受遺者の承諾意思を公証人・専門家と一緒に確認しながら作成できるため、後々のトラブルを避けやすくなります。生前に、想定する受遺者に直接ペットの性格や世話の仕方を伝えておくことも、実際に引き継がれた後のミスマッチを防ぐうえで有効です。
ペット信託という選択肢
負担付遺贈は、受遺者がペットのために本当に財産を使うかを強制する手段が限定的という弱点があります。より確実に飼育費用の使途を管理したい場合は、「ペット信託」という仕組みを利用する方法もあります。信頼できる第三者(信託監督人)を置き、財産がペットの飼育のためだけに使われるよう管理してもらう仕組みで、負担付遺贈よりも実行の確実性を高められます。費用や手続きの手間はかかりますが、大切なペットの将来を確実に守りたい場合の選択肢として検討する価値があります。どちらの方法を選ぶ場合も、元気なうちに専門家(弁護士・司法書士・行政書士)に相談し、家族やペットを託す相手と十分に話し合っておくことが何より大切です。
ペットの寿命は人間より短いとはいえ、大型の鳥類や一部の亀のように人間より長生きする種類もあります。飼育期間の見通しによって必要な財産額や託す相手の選び方も変わってくるため、ペットの種類・年齢に応じた想定飼育期間も踏まえて準備しておくと安心です。
また、遺贈する財産の額は「ペットの生涯にかかる飼育費用の目安」を基準に決めるのが現実的です。フード代・医療費・トリミング代などを年間でおおまかに見積もり、想定される残りの寿命をかけ合わせることで、必要な金額の目安を導き出せます。金額が過小だと途中で受遺者の負担が大きくなり、過大だと他の相続人との間で遺留分をめぐるトラブルに発展することもあるため、専門家と相談しながらバランスの取れた金額を設定することが大切です。
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